うっかりすると、涙が込み上げてきてしまう。
告知からの数日間、私の涙腺はゆるゆるだった
父にも電話した。
うちは両親が離婚しているため、
別々の連絡となるのだ。
「どうした?何かあったのか?」と
さっそく父に言われた。
「うーん、気になる事があって病院に行ったら
悪性の腫瘍だったよ。場所は胸の下なんだけど・・」
そして手術をすること、
だけど数日間の入院で済む事を、手早く説明した。
あまり心配させたくなかった。
「それは乳がんか・・?」
あまりの力ない声に、私ははっきり乳がんと言えなかった。
「たぶん・・」と一言だけ言って、
それでも遠回しに乳がんということを伝えた。
父の切ない声が、衝撃を物語っていた。
それがいつまでも気にかかり、また涙が流れてきた。
電話を切ったあと、
今度は手術に向けての準備が始まった。
どうして涙が出るのかな。
きっと私自身が、まだ病気を受け止めていない。
だけど、事実だけは進むからだと思う。
受け止めきれない事実に押しつぶされて、
感情だけが不安定になっていく。
普段は、ものすごくポジティブなんだけど、
がんという一言の威力は大きい。