会社は辞めることになってしまったが、
いる間は、せめてちゃんと働こう。そして甘えよう。
そう心に思い、過ごすことにした。
仕事に支障はなかったけど、術後、腕がうまく動かなかった。
というより、伸びきらなかった。
わきの下にある、ピーンとした筋のようなもののせいだ。
うーん、うーん、と痛みに耐えながら、
毎晩、お風呂上りのストレッチを欠かさなかった。
もちろん自己流だ。
だけどちょっとだけ、こんなんでいいのか?
という不安に陥る瞬間があった。
だって筋が切れてしまう気がする時もある。
そこで病院に紹介された、
乳がん患者のための、リハビリ教室に行ってみることにした。
3月にしてはとても暖かい、晴れた日だった。
ちょっと遅刻してその扉を開けると、みんなが注目してきた。
ぐるっと見渡すと、明らかに自分が若いということが分かる。
母親か、おばあちゃんくらいの年齢のみなさまだ。
しかも遅刻したせいで、
一番前のど真ん中というポジションをいただいた。
とにかくスタートしたら、これが意外と効いた。
背筋をほぐし、首をのばし、足を使う。
自分でやっていたストレッチと違って、体中がほぐれていく。
若干ヨガも入っているようだった。
一通りすべてを終えたときには、かるく汗をかき相当疲れていた。
これから会社へ行くのかと思うと、ぐったりした。
が、そこは頑張ると決めたのだ。
これからお仕事なの?術後3週間なのに!?
でも若いから。ねー。そうねー若いから。
そういっておばちゃんたちに、見送られたので、愛想笑いをしておいた。
帰りは、ふだん歩かない大きな橋を渡り、
キラキラ光る川と、カモメをしばらく見ていた。
こんな日は、とても気分がいい。
悪くない。そう思った。